風と遊べる家
風がくれる幸せ
温泉旅館で至福の時間を過ごしていると、障子に写るもみじが何ともいえない安らぎをくれたのを覚えている。
仕掛けたのは風。
優しく頬を撫でるように吹く風はもみじを揺らし、そして障子に映して私の心に届けてくれたのである。
至福の時間に安らぎをもてなしてくれる風と。
暑い夏の日、畳に寝転んで昼寝をしていると風が遊びに来ることがあった。
汗ばんだ体に冷たい風はとても心地良かった。
また吹いてこないかなぁと、夢の中で風を待っている。
遠い昔の子供時代、そんな思い出が僕の原風景のなかにある。
無くしてはいけない大切なもの、きっとそんな幸せな原風景に隠されているのではないだろうか?
風が届けてくれるもの
家の中で自然の風を感じて楽しめたらどんなにいいだろう。
木の葉や笹の葉が風と戯れる音や夏の風にくすぐられて微笑む風鈴の音に涼しさを感じ、ふと暑さを忘れることがある。
春にはジャスミンの香り、秋にはキンモクセイの香り、風はそれぞれの季節の香りを運んでくれる。
風は豊かな自然の宝ものを届けてくれるのである。
そしてそれは家族にゆとりと幸せを齎すに違いないと思う。
自然と共に生きることから生まれた絆
日本の冬の文化の一つに「囲炉裏」があった。
昔は隙間風は普通だったので家族がみんな囲炉裏の周りに集まって暖を取っていた。
冷たい風も家族の心を温かくして絆を深めてくれたのではないだろうか?
勿論今は隙間風のある家はつくれないが、そこから教えられる家族の絆を深めるには?という視点から家づくりを見つめてみることも大切ではないだろうか?
宮崎の家
暑い空気は高い所に集まるので、宮崎の家に吹抜けはよく似合う。
風が家に入ろうとしても、抜け道がないと風は入ってこれない。
吹抜けをつくり、風の通り道を作ってあげることで、風も安心して入って来て出ていける。
また、西日を避けるためにシャットアウトしがちだが、宮崎の場合は夏の夜は西風がよく吹くので、風の道を考えてやると心地よい夜を楽しむこともできる。
そういう意味では自然と向き合い共存する家を推奨したいと思う。
それがいずれは心を豊かにすることになると思うので。
風って
目に見えないが、人の心を豊かにしてくれる存在のようだ。
もし風の存在が無くなったとしたら、もしかして時が止まってしまっているかのように感じるかも知れない。
そんなことを考えると、改めて風の重要性を感じずにはいられない。
頬を伝うそよ風にもありがとうを伝えられる気持ちになれる。
そんな気持ちになれる家は最高の幸せを齎してくれるはずである。